ベントレーの(ちょう)高級(こうきゅう)プラグインハイブリッドSUV「ベンテイガ・ハイブリッド」は、「隠す(かくす)ことの美学(びがく)」に満ち(みち)ている

世界(せかい)(はつ)(ちょう)豪華(ごうか)プラグインハイブリッドSUVとなるベントレーの「ベンテイガ・ハイブリッド」は、2019(ねん)(ちゅう)発売(はつばい)予定(よてい)されている。PHOTOGRAPH BY BENTLEY

初代(しょだい)エグモント(はく)ジョン・パーシヴァルは1724(ねん)、いとこに宛て(あて)手紙(てがみ)のなかでバッキンガムシャーにあるストウ庭園(ていえん)絶賛(ぜっさん)した。「この(にわ)美し(うつくし)さをさらに高め(たかめ)ているのは、(かべ)によって囲わ(かこわ)れていないことです。その代わり(かわり)に「隠し(かくし)(かき)」が設け(もうけ)られていて、美しい(うつくしい)木立(こだち)田舎(いなか)風景(ふうけい)見晴らし(みはらし)保た(たもた)れ、きれいに(うえ)栽された囲い(かこい)()がどこで終わる(おわる)のかを意識(いしき)せずに済む(すむ)のです」

パーシヴァルに言わ(いわ)せれば、そうして自然(しぜん)美し(うつくし)さを愛でる(めでる)には、()たくないものを隠す(かくす)仕掛け(しかけ)必要(ひつよう)であり、それは隠し(かくし)(かき)によって可能(かのう)になった。一般(いっぱん)(てき)(かべ)(しがらみ)は、家畜(かちく)たちを人間(にんげん)望ん(のぞん)場所(ばしょ)にとどめておくことはできるが、しばしば景観(けいかん)損なう(そこなう)のだ。

こうして18世紀(せいき)欧州(おうしゅう)造園(ぞうえん)()たちは、一方(いっぽう)(きゅう)勾配(こうばい)のスロープ、もう一方(いっぽう)(かべ)のように切り立っ(きりたっ)(みぞ)用い(もちい)た。こうすると、屋敷(やしき)のある(がわ)からは隠し(かくし)(かき)視界(しかい)入ら(はいら)ず、景色(けしき)切れ目(きれめ)なく続い(つずい)ているように見える(みえる)

人気(にんき)博し(はくし)たこの工夫(くふう)米国(べいこく)でも広まり(ひろまり)、のちに南半球(みなみはんきゅう)でもとり入れられたが、そこでは隠し(かくし)(かき)が「(ぎゃく)向き(むき)」に用い(もちい)られた。メルボルン大学(だいがく)オーストラリア科学(かがく)技術(ぎじゅつ)歴史(れきし)遺産(いさん)センターによると、オーストラリアのキュー精神(せいしん)()病院(びょういん)隠し(かくし)(かき)は、「高い(たかい)(かべ)患者(かんじゃ)(がわ)面し(めんし)ていて脱走(だっそう)防ぎ(ふせぎ)ながら、外側(そとがわ)からは(かべ)低く(ひくく)見え(みえ)患者(かんじゃ)監禁(かんきん)されている印象(いんしょう)与え(あたえ)ないようにしていた」という。

それから3世紀(せいき)。この隠し(かくし)(かき)のコンセプトは、世界(せかい)(はつ)となるベントレーの(ちょう)高級(こうきゅう)プラグインハイブリッドSUV「ベンテイガ・ハイブリッド」に取り入れ(とりいれ)られたのだ。

隠し(かくし)(かき)」の美学(びがく)

ベントレーのデザイナーたちは、ダッシュボードを構成(こうせい)するパネルの継ぎ目(つぎめ)隙間(すきま)消そ(けそ)うと頑張る(がんばる)代わり(かわり)に、ダッシュボードの各部(かくぶ)をフロントガラスに近い(ちかい)ものほど、その手前(てまえ)部分(ぶぶん)比べ(くらべ)(すう)mmだけ低く(ひくく)なるようにした。これが、いわばミニチュア(ばん)隠し(かくし)(かき)として働く(はたらく)運転(うんてん)する(もの)には、それらが一体(いったい)()して見える(みえる)のだ。

さらにデザイナーたちは、もうひとつの隠し(かくし)(かき)設ける(もうける)ことで、使わ(つかわ)れていないときにはワイパーが見え(みえ)ないようにした。このクルマのインテリアデザインを統括(とうかつ)したダレン・デイによれば、「ワイパーは醜い(みにくい)」からだ。

ベントレーのデザインチームは、隠し(かくし)(かき)呼ば(よば)れる(むかし)からの造園(ぞうえん)技法(ぎほう)応用(おうよう)して、ドライヴァーにはダッシュボードが継ぎ目(つぎめ)なく見える(みえる)ようにした。PHOTOGRAPH BY BENTLEY

パーシヴァルと同様(どうよう)にデイも、豪華(ごうか)さを満喫(まんきつ)するには“見苦しい(みぐるしい)もの”を隠す(かくす)ことが重要(じゅうよう)だと考え(かんがえ)ている。いまとなっては、かつては高級(こうきゅう)(しゃ)だけの特権(とっけん)だった()機能(きのう)液晶(えきしょう)画面(がめん)高度(こうど)運転(うんてん)支援(しえん)機能(きのう)を、欧州(おうしゅう)米国(べいこく)売ら(うら)れている最も(もっとも)安価(あんか)なクルマでも装備(そうび)するようになった。そんな時代(じだい)でけに、特に(とくに)必要(ひつよう)なことだろう。

ベントレーの親会社(おやがいしゃ)であるフォルクスワーゲンが、25,000ドル((やく)270(まん)(えん))の「ゴルフ」に車線(しゃせん)逸脱(いつだつ)防止(ぼうし)支援(しえん)システムを搭載(とうさい)できるなら、その8(ばい)払っ(はらっ)てベントレーを買う(かう)理由(りゆう)はどこにあるのか、ということなのだ(ベントレーは、まだベンテイガ・ハイブリッドの市販(しはん)価格(かかく)公表(こうひょう)していない。ちなみにベンテイガのベースモデルの価格(かかく)は19(まん)ドル=(やく)2,050(まん)(えん)からだ)。

すべてをシームレスに

もちろん、ベンテイガ・ハイブリッドは速く(はやく)てパワフルだ。時速(じそく)0-60マイル((どう)0-96km)の加速(かそく)は5.2(びょう)最大(さいだい)トルクは500lb-ftを超える(こえる)手縫い(てぬい)(かわ)シートは22方向(ほうこう)調節(ちょうせつ)可能(かのう)で、マッサージ機能(きのう)もある。ドアと(まど)閉じれ(とじれ)ば、車内(しゃない)墓場(はかば)並み(なみ)静けさ(しずけさ)だ。しかしデイの意見(いけん)によれば、価格(かかく)()正当(せいとう)()するのはドライヴァーでさえ気づか(きずか)ないかもしれない細部(さいぶ)だという。

例えば(たとえば)、すべての金属(きんぞく)(せい)ノブに3(れつ)のローレット加工(かこう)細かい(こまかい)凹凸(おうとつ)(じょう)加工(かこう))が施さ(ほどこさ)れていること。あるいは、黒い(くろい)ガラス(せい)小さな(ちいさな)突起(とっき)のような室内(しつない)温度(おんど)センサーがステアリングの(かげ)配置(はいち)されていて、ほとんどのドライヴァーの()入ら(はいら)ないことなどだ。

さらにデイのチームは、助手(じょしゅ)(せき)(がわ)エアバッグの存在(そんざい)示す(しめす)四角い(しかくい)(わく)をダッシュボードからなくしてみせた。ドイツのある会社(かいしゃ)依頼(いらい)して、ちょっと()ただけではわからないほど細かい(こまかい)(あな)開い(ひらい)(かわ)をつくらせ、その部分(ぶぶん)からエアバッグが展開(てんかい)できるようにしたのだ(染料(せんりょう)によって(かわ)染まり(そまり)具合(ぐあい)異なる(ことなる)ため、ベントレーは提供(ていきょう)するすべてのインテリアカラーについて(あな)開け(あけ)加工(かこう)のプロセスをテストしなければならなかった)。

すべてがシームレスであるかのように思わ(おもわ)せるというこのアイデアは、贅沢(ぜいたく)(ひん)富裕(ふゆう)(そう)向け(むけ)サーヴィスには普通(ふつう)にあるもので、特に(とくに)新しい(あたらしい)発想(はっそう)ではない。ダムウェーター(貨物(かもつ)(よう)小型(こがた)エレヴェイター)のおかげで、使用人(しようにん)人目(ひとめ)につかずに食べ物(たべもの)洗濯(せんたく)(ぶつ)運べる(はこべる)。コンシェルジュ・サーヴィスに予約(よやく)頼む(たのむ)裕福(ゆうふく)旅行(りょこう)(しゃ)たちは、自分(じぶん)でミシュランの(ほし)付き(つき)レストランに電話(でんわ)して予約(よやく)する必要(ひつよう)もなく、ゆったりとヴァケーションを楽しめる(たのしめる)のだ。

ベンテイガには、ドライヴァーでさえ気づか(きずか)ないかもしれないディテールが詰め込ま(つめこま)れている。例えば(たとえば)、すべての金属(きんぞく)(せい)ノブには3(れつ)のローレット加工(かこう)施さ(ほどこさ)れている。PHOTOGRAPH BY BENTLEY

EVモードへの移行(いこう)自動(じどう)

ところがベントレーは、パネルの隙間(すきま)よりもっと大きな(おおきな)ものを隠さ(かくさ)なければならなかった。同社(どうしゃ)(はつ)のプラグインハイブリッドは、容量(ようりょう)17.3kWhのバッテリー(テスラの最上級(さいじょうきゅう)モデルの5分の(ぶんの)1ほどの大き(おおき)さ)と、3.0リッターV6エンジンを組み合わせ(くみあわせ)ている。このバッテリーはスペアタイヤがあった場所(ばしょ)収まっ(おさまっ)ている。

ベンタイガの電気(でんき)系統(けいとう)統括(とうかつ)したアントニー・ハイルゲンドルフによると、バッテリーは、ベントレーが排出(はいしゅつ)ガス規制(きせい)適合(てきごう)するためにひと役買う(かう)一方(いっぽう)で、新た(あらた)なチャレンジをもたらしたという。なぜならこのクルマは、完全(かんぜん)電動(でんどう)モードとガソリンエンジンモードの両方(りょうほう)走れる(はしれる)わけだが、その一方(いっぽう)から他方(たほう)への移行(いこう)可能(かのう)限り(かぎり)シームレスにする必要(ひつよう)があったからだ。

静か(しずか)なモーターと、内燃(ないねん)機関(きかん)であるV6エンジンのギャップを完全(かんぜん)になくすことはできないだろう。それでもベントレーのエンジニアたちは、その境目(さかいめ)をかなり目立た(めだた)ないものにした。

そしてバッテリーの最も(もっとも)効率(こうりつ)(てき)使い方(つかいかた)については、ドライヴァーが考える(かんがえる)必要(ひつよう)がないようにした。ドライヴァーがカーナビを使っ(つかっ)ている場合(ばあい)、そのルートに基づい(もとずい)電気(でんき)駆動(くどう)最も(もっとも)効率(こうりつ)(てき)である場所(ばしょ)例えば(たとえば)市街地(しがいち)走行(そうこう)など)を見定め(みさだめ)、それに従って自動的(じどうてき)制御(せいぎょ)するのだ。

それでも隠せ(かくせ)ないもの

さらにベンタイガは、カメラとレーダーからの情報(じょうほう)基づい(もとずい)て、回生(かいせい)ブレーキのレヴェルも自動(じどう)調整(ちょうせい)する。ドライヴァーがアクセルペダルを戻し(もどし)たとき、道路(どうろ)空い(あい)ている状況(じょうきょう)であれば、ベンタイガは普通(ふつう)のガソリンエンジン(しゃ)同じ(おなじ)ようにコースティング(惰性(だせい)走行(そうこう))する。だが、道路(どうろ)渋滞(じゅうたい)している場合(ばあい)には、エネルギー回生(かいせい)のレヴェルを上げ(あげ)てクルマを減速(げんそく)させ、発生(はっせい)した電気(でんき)エネルギーをバッテリーに送りこむ(おくりこむ)

ハイブリッドの設定(せってい)では、こうした細か(こまか)配慮(はいりょ)がたくさん行わ(おこなわ)れており、ドライヴァーはあれこれと考え(かんがえ)巡らせる(めぐらせる)必要(ひつよう)(せい)から解放(かいほう)される。「そうすることで、クルマのその他の部分(ぶぶん)存分(ぞんぶん)味わっ(あじわっ)ていただけます」と、ハイルゲンドルフは言う(いう)

それでも隠せ(かくせ)ないものもある。充電(じゅうでん)装置(そうち)だ。ガレージに充電(じゅうでん)装置(そうち)設置(せっち)する必要(ひつよう)がある顧客(こきゃく)向け(むけ)に、ベントレーはフランス(じん)デザイナーのフィリップ・スタルクに依頼(いらい)して「パワーデッキ」をつくり、ガレージの(かべ)飾れる(かざれる)ようにした。

もっとも、ベントレーのオーナーともなれば、自ら(みずから)ガレージに出入り(でいり)したりはしないのかもしれない。

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