真夏(まなつ)のエンジンルームでも耐久(たいきゅう)(せい)失わ(うしなわ)ないゴムホースの秘密(ひみつ)

過酷(かこく)をきわめるエンジンルーム環境(かんきょう)のなかでゴムを主体(しゅたい)とするホースの耐久(たいきゅう)(せい)著しく(いちじるしく)高まっ(たかまっ)ている。交換(こうかん)をされるわけでもなく、破損(はそん)報せ(しらせ)聞こえ(きこえ)てこない。なぜ、どのようにして長寿(ちょうじゅ)(いのち)(だか)耐久(たいきゅう)()実現(じつげん)しているのだろうか。

 自動車(じどうしゃ)には、いわゆる“ゴムのホース”が随所(ずいしょ)使用(しよう)されている。エンジンであればフューエルホース、ブローバイホース、ラジエーターホース、()(きゅう)()備え(そなえ)ていればインタークーラーの配管(はいかん)車輪(しゃりん)それぞれにはブレーキホース、エアコンの配管(はいかん)油圧(ゆあつ)パワーステアリングのホース、ウィンドウウォッシャーの配管(はいかん)……(れい)挙げれ(あげれ)ばきりがない。しかし近年(きんねん)自動車(じどうしゃ)において、これらのホースが破損(はそん)したために交換(こうかん)したという(はなし)はきわめて珍しい(めずらしい)。ゴムのホースが、なぜこれほど長寿(ちょうじゅ)(いのち)(だか)耐久(たいきゅう)(せい)持つ(もつ)ようになったのだろうか。

 横浜ゴム(よこはまごむ)はタイヤのメーカーとしては広く(ひろく)知ら(しら)れているが、自動車(じどうしゃ)(よう)ホースのサプライヤーとしても高い(たかい)シェアを誇っ(ほこっ)ている。同社(どうしゃ)事業(じぎょう)分野(ぶんや)はエアコン(よう)ホースおよび油圧(ゆあつ)パワーステアリング(よう)ホース。どちらの部品(ぶひん)も「そろそろ交換(こうかん)しよう」と気軽(きがる)には思え(おもえ)ない部位(ぶい)配管(はいかん)だ。当然(とうぜん)、ユーザーは自動車(じどうしゃ)のライフと同等(どうとう)考え(かんがえ)ている。

エアコン(よう)ホース

 エアコンホースは、ほかの部位(ぶい)のホースに比べ(くらべ)少々(しょうしょう)特異(とくい)要件(ようけん)がある。一般(いっぱん)(てき)に、ホースは作動(さどう)()によってパワーを伝達(でんたつ)する手段(しゅだん)として使用(しよう)されるのに対し、エアコンホースは(なか)流れる(ながれる)冷媒(れいばい)密閉(みっぺい)第一義(だいいちぎ)とし、しかも気体(きたい)液体(えきたい)状態(じょうたい)繰り返す(くりかえす)からだ。当然(とうぜん)ながら、ホースの作り方(つくりかた)構造(こうぞう)にも違い(ちがい)求め(もとめ)られる。

 エアコンのシステムが劇的(げきてき)変化(へんか)したわけではないので、エアコンホースに求め(もとめ)られる耐圧(たいあつ)()も、かつてから高まっ(たかまっ)ているわけではない。また、耐圧(たいあつ)考え方(かんがえかた)(むかし)から変わっ(かわっ)ているわけではないので、誤解(ごかい)恐れ(おそれ)ずに言え(いえ)構造(こうぞう)変える(かえる)必要(ひつよう)もない。単純(たんじゅん)圧力(あつりょく)保持(ほじ)漏れ(もれ)防止(ぼうし)考える(かんがえる)なら、金属(きんぞく)配管(はいかん)用いれ(もちいれ)ばいい。実際(じっさい)家庭(かてい)(よう)などの据え置き(すえおき)エアコンシステムには(どう)(かん)使わ(つかわ)れているし、これなら漏れる(もれる)心配(しんぱい)もほとんどない。しかし自動車(じどうしゃ)のエアコンシステムには、振動(しんどう)という条件(じょうけん)がつねにつきまとう。金属(きんぞく)配管(はいかん)では疲労(ひろう)して折れ(おれ)てしまうし、またコンプレッサーの騒音(そうおん)をキャビンに伝播(でんぱ)してしまうというデメリットも生ずる(しょうずる)。かといって、圧力(あつりょく)保持(ほじ)のために建設(けんせつ)機械(きかい)使用(しよう)されるような(ちょう)高圧(こうあつ)ホースを使っ(つかっ)ては重量(じゅうりょう)がかさみ、配管(はいかん)取り回し(とりまわし)にも制限(せいげん)()てしまう。そのため、自動車(じどうしゃ)(よう)エアコンはホースとアルミ(かん)併用(へいよう)した構造(こうぞう)採っ(とっ)ているのだ。

最新(さいしん)のトレンドは、内部(ないぶ)施し(ほどこし)たナイロン樹脂(じゅし)コート。ホース内部(ないぶ)青い(あおい)部分(ぶぶん)が、その処理(しょり)だ。内側(うちがわ)からナイロン樹脂(じゅし)コート、(てい)透過(とうか)(せい)のIIR、ポリエステル樹脂(じゅし)補強(ほきょう)(そう)、アウターのEPDMという構造(こうぞう)。ご存じ、オゾンホールの問題(もんだい)から冷媒(れいばい)はR12からR134aに取っ(とっ)代わら(かわら)れたが、R134aはR12に比べ(くらべ)分子(ぶんし)(すう)(じゅう)分の(ぶんの)(いち)小さい(ちいさい)ため、ホースの耐透過(とうか)(せい)高め(たかめ)なければならなかった。R12当時(とうじ)のホースの材質(ざいしつ)はNBRだったが、冷媒(れいばい)漏れ(もれ)止める(とめる)べく、(てい)透過(とうか)(せい)合成(ごうせい)ゴムが開発(かいはつ)され、さらなる手段(しゅだん)として(さい)内部(ないぶ)にナイロンコートを施し(ほどこし)たホースが作ら(つくら)れている。ほかの材料(ざいりょう)考慮(こうりょ)したが、エアコンホースの置か(おか)れる環境(かんきょう)温度(おんど)から、ナイロンに決定(けってい)したという。これにより、NBRに対して(てい)透過(とうか)(せい)合成(ごうせい)ゴムで10分の(ぶんの)1程度(ていど)、ナイロンコートにいたっては20分の(ぶんの)1の耐透過(とうか)性能(せいのう)実現(じつげん)している。かつてはハイシーズンになるとエアコンガスの(さい)充填(じゅうてん)がなされていたのに、ここ最近(さいきん)(くるま)がそうした作業(さぎょう)要さ(ようさ)なくなったのは、こうしたホースの進化(しんか)支え(ささえ)ているのだ。

 また、エアコンホースの置か(おか)れる環境(かんきょう)過酷(かこく)だ。ますます過密(かみつ)()するエンジンルームは(ねつ)逃げ場(にげば)失い(うしない)高熱(こうねつ)()一途(いっと)をたどる。エアコンサイクルをみても、コンプレッサー直後(ちょくご)冷媒(れいばい)高温(こうおん)高圧(こうあつ)であり、片や(かたや)エキスパンションバルブを通過(つうか)したあとは低圧(ていあつ)低温(ていおん)。バルクヘッドからエンジンルームに戻る(もどる)エアコンホースがカチカチに凍っ(こおっ)ているのをご覧になった(ほう)もあるかもしれない。ホースの対応(たいおう)温度(おんど)はマイナス40℃からプラス120℃という()だが、実際(じっさい)熱い(あつい)ものと冷たい(つめたい)もの──使っ(つかっ)ているときはいちばん冷たい(つめたい)──がいつも流れ(ながれ)続ける(つずける)という(てん)で、かなりシビアなコンディションが求め(もとめ)られるのだ。エアコンサイクル自体(じたい)最大(さいだい)圧力(あつりょく)は、(やく)3.9MPa(システムが定める(さだめる)最大(さいだい)圧による)。ちなみに、流体(りゅうたい)温度(おんど)は、夏場(なつば)渋滞(じゅうたい)などで100℃に達する(たっする)

油圧(ゆあつ)パワーステアリング(よう)ホース

 一方(いっぽう)油圧(ゆあつ)パワーステアリング(よう)ホース。損壊(そんかい)したら乗員(じょういん)(いのち)にかかわるだけに、重要(じゅうよう)保安(ほあん)部品(ぶひん)として生産(せいさん)管理(かんり)厳しく(きびしく)定期(ていき)(てき)製造(せいぞう)()にコントロール試験(しけん)がなされる。

 これまで知ら(しら)なかったのが、ホースの内部(ないぶ)構造(こうぞう)(した)掲載(けいさい)したのが断面(だんめん)(なか)示し(しめし)たカットモデルである。キャップがなされた螺旋(らせん)(かん)がホースの(なか)収め(おさめ)られているのがおわかりかと思う(おもう)が、これは作動(さどう)(おん)のチューニングを担う(になう)部品(ぶひん)作動(さどう)()流れる(ながれる)(さい)生ずる(しょうずる)(おと)脈動(みャくどう)圧を、この螺旋(らせん)(かん)軽減(けいげん)する。ひとつのアセンブリにはこの螺旋(らせん)(かん)(すう)(ほん)収め(おさめ)られていて、しかしそれらはつながっていない。生ずる(しょうずる)周波数(しゅうはすう)(たい)によって、(なが)さと距離(きょり)(おと)軽減(けいげん)努める(つとめる)構造(こうぞう)であり、ホース外部(がいぶ)のカシメは「ねらったところにこの(かん)固定(こてい)したい」という意図(いと)によるもの。

やはりこちらも、長寿(ちょうじゅ)(いのち)(だか)耐久(たいきゅう)支え(ささえ)てきたのは材料(ざいりょう)進化(しんか)。おもに耐熱(たいねつ)(せい)向上(こうじょう)させればそのぶんマージンが生まれ(うまれ)、ライフサイクルを長く(ながく)することができる。耐油性(ゆせい)優れ(すぐれ)たNBR/表皮(ひょうひ)CRの組み合わせ(くみあわせ)から、近年(きんねん)はさらに耐熱(たいねつ)耐久(たいきゅう)(せい)向上(こうじょう)すべく、塩素(えんそ)()ポリエチレンやHNBR(水素(すいそ)()アクリロニトリルブタジエンゴム)といった(しん)素材(そざい)切り替わり(きりかわり)つつある。また、補強(ほきょう)(ざい)としての(いと)には、ナイロン樹脂(じゅし)使用(しよう)される。エアコン(よう)ホースにはポリエステル樹脂(じゅし)使わ(つかわ)れるのに対して強度(きょうど)劣る(おとる)イメージだが、これはパワーステアリング(よう)ホースが振動(しんどう)動作(どうさ)(おん)吸収(きゅうしゅう)するため膨張(ぼうちょう)するから。動き(うごき)持た(もた)せるだけに、その編み(あみ)(かた)角度(かくど)には細心(さいしん)注意(ちゅうい)払わ(はらわ)れている。パワーステアリング(よう)ホースの置か(おか)れる環境(かんきょう)は、自動車(じどうしゃ)のサイズや使用(しよう)状況(じょうきょう)にもよるが、最高(さいこう)温度(おんど)はおよそ150℃/最大(さいだい)圧は(やく)10MPa。当然(とうぜん)、ステアリングを頻繁(ひんぱん)使う(つかう)シチュエーションが過酷(かこく)条件(じょうけん)であり、高速(こうそく)一定(いってい)(そく)走行(そうこう)するより、(なん)()もステアリングを切り返し(きりかえし)ているのになかなか駐車(ちゅうしゃ)できない──というのが、いちばん厳しい(きびしい)。その意味(いみ)で、もっとも厳しい(きびしい)のが教習(きょうしゅう)(しゃ)での使途(しと)だという。

 (おん)消し(けし)手法(しゅほう)も、(かん)片方(かたほう)だけ入れ(いれ)たり、真ん中(まんなか)絞っ(しぼっ)たり、カシメの位置(いち)動かし(うごかし)たりと、長年(ながねん)のノウハウに基づい(もとずい)ている。(すう)(じゅう)(ねん)(まえ)のパワステ(しゃ)据え(すえ)切り(きり)(とき)に「キューッ」という(おと)放っ(はなっ)ていたのに、最近(さいきん)(くるま)からそうした(おと)聞こえ(きこえ)ないのは、必ず(かならず)この螺旋(らせん)(かん)仕込ま(しこま)れているからだ。当然(とうぜん)、ホース単体(たんたい)ではなく、油圧(ゆあつ)ホースアセンブリとして、メーカーに納める(おさめる)格好(かっこう)になる。

 エンジンやギヤボックスに直接(ちょくせつ)関連(かんれん)するわけではなく、決して(けっして)華やか(はなやか)ではないために()向け(むけ)られることの少ない(すくない)自動車(じどうしゃ)(よう)ホース。しかしわれわれユーザーがまったく()にすることなく長く(ながく)自動車(じどうしゃ)使い(つかい)続け(つずけ)られるのは、ホースの長寿(ちょうじゅ)(いのち)(だか)耐久(たいきゅう)()大きく(おおきく)寄与(きよ)しているのである。

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