(はやし)()()泣き(なき)続ける(つずける)横顔(よこがお)忘れ(わすれ)られない “敗者(はいしゃ)”を描く(えがく)『いだてん』に込め(こめ)られたもの

 『いだてん~東京(とうきょう)オリムピック(はなし)(ばなし)~』(NHK総合(そうごう)(だい)30(かい)黄金(おうごん)(きょう)時代(じだい)」が8(つき)11(にち)放送(ほうそう)された。予て(かねて)より金メダル(きんめだる)期待(きたい)されていた(だい)横田(よこた)(つとむ)(はやし)()())。ハプニングに見舞わ(みまわ)れながらも400メートル自由形(じゆうがた)出場(しゅつじょう)したが、結果(けっか)銅メダル(どうめだる)終わる(おわる)(はやし)(なみだ)濡れ(ぬれ)表情(ひょうじょう)からは、(だい)横田(よこた)責任(せきにん)(かん)(つよ)さと金メダル(きんめだる)獲得(かくとく)できなかった悔し(くやし)さがひしひしと伝わっ(つたわっ)てきた。

参考(さんこう)阿部(あべ)サダヲ演じる(えんじる)政治(せいじ)明るい(あかるい)だけのキャラクターではない 『いだてん』(だい)()()の“複雑(ふくざつ)さ”を体現(たいげん)

 (だい)30(かい)では、金メダル(きんめだる)ラッシュと(ぜん)種目(しゅもく)制覇(せいは)目指す(めざす)水泳(すいえい)日本(にっぽん)代表(だいひょう)チームを襲う(おそう)ハプニングが描か(えがか)れる。

 1932(ねん)、ロサンゼルスオリンピックが開幕(かいまく)。その開会(かいかい)(しき)直前(ちょくぜん)(だい)横田(よこた)腹痛(はらいた)襲わ(おそわ)れ、悶え(もだえ)苦しむ(くるしむ)様子(ようす)映し出さ(うつしださ)れた。(はやし)激しく(はげしく)歪ん(いがん)表情(ひょうじょう)に、思わず(おもわず)不安(ふあん)になった視聴(しちょう)(しゃ)多い(おおい)ことだろう。しかし(だい)横田(よこた)は、高石(たかいし)斎藤(さいとう)(こう))や小池(こいけ)前田(まえだ)志郎(しろう))の(まえ)何事(なにごと)もなかったように振る舞っ(ふるまっ)た。このシーンから「()選手(せんしゅ)迷惑(めいわく)をかけてはいけない」という(だい)横田(よこた)責任(せきにん)(かん)(つよ)さが伝わっ(つたわっ)てくる。

 冒頭(ぼうとう)(だい)横田(よこた)のシーン以降(いこう)水泳(すいえい)選手(せんしゅ)(だん)に関する不穏(ふおん)雰囲気(ふんいき)はしばらく(いき)潜める(ひそめる)高石(たかいし)競り合っ(せりあっ)ていた若き(わかき)選手(せんしゅ)宮崎(みやざき)西山(にしやま)(じゅん))が100m自由形(じゆうがた)金メダル(きんめだる)獲得(かくとく)し、幸先(さいさき)のいいスタートとなった日本(にっぽん)選手(せんしゅ)(だん)政治(せいじ)阿部(あべ)サダヲ)は、監督(かんとく)松澤(まつざわ)皆川(みなかわ)(さる)())に内緒(ないしょ)宮崎(みやざき)祝勝(しゅくしょう)(かい)開い(ひらい)た。政治(せいじ)(だい)横田(よこた)に「(つぎ)はお前だ。宮崎(みやざき)続け(つずけ)!」と(こえ)をかける。政治(せいじ)期待(きたい)応えよ(こたえよ)うと、(にく)をかき込む(だい)横田(よこた)。その後、女子(じょし)のために振舞わ(ふるまわ)れた(にく)まで食べ(たべ)てしまうやんちゃな(いち)(めん)微笑ましい(ほほえましい)。だが、東京(とうきょう)にいるマリー(薬師丸(やくしまる)ひろ子)の占い(うらない)シーンが挿入(そうにゅう)されることで再び(ふたたび)不穏(ふおん)空気(くうき)漂う(ただよう)。なぜなら、マリーの導き出し(みちびきだし)結果(けっか)はいつも(ぎゃく)出る(でる)からだ。マリーは「(かれ)(だい)横田(よこた))きっと金メダル(きんめだる)獲る(える)わ」と言っ(いっ)た。

 (よる)遅く(おそく)松澤(まつざわ)野田(のだ)三浦(みうら)(たか)(だい))のもとに、腹痛(はらいた)訴え(うったえ)てやってきた(だい)横田(よこた)慌て(あわて)ふためく松澤(まつざわ)に、宮崎(みやざき)()決して(けっして)(だい)横田(よこた)体調(たいちょう)について告白(こくはく)した。「実は(じつは)(よん)()(にち)(まえ)から(ねつ)があったんです。(はら)下し(くだし)てて」。ほんの一瞬(いっしゅん)だが、宮崎(みやざき)言葉(ことば)聞い(きい)(だい)横田(よこた)痛み(いたみ)悶え(もだえ)ながらも少し(すこし)焦っ(あせっ)たような表情(ひょうじょう)見せる(みせる)。その表情(ひょうじょう)により、宮崎(みやざき)次に(つぎに)発し(はっし)た「病気(びょうき)練習(れんしゅう)休ん(やすん)だら、メンバーから外さ(はずさ)れると思っ(おもっ)たんでしょう」という台詞(だいし)が、(だい)横田(よこた)本音(ほんね)なのだとわかる。

 (りん)痛み(いたみ)にのたうつ演技(えんぎ)(なか)で、痛み(いたみ)一瞬(いっしゅん)治る(なおる)たびに「(ぜん)種目(しゅもく)制覇(せいは)のために迷惑(めいわく)はかけられない」という表情(ひょうじょう)浮かべ(うかべ)(だい)横田(よこた)繊細(せんさい)心情(しんじょう)表現(ひょうげん)する。胃腸(いちょう)カタルだと診断(しんだん)された(のち)の「やれます!」という必死(ひっし)訴え(うったえ)や、リレー辞退(じたい)言い渡さ(いいわたさ)れた(のち)、やるせなさに()食いしばる(くいしばる)表情(ひょうじょう)切ない(せつない)

 リレーを辞退(じたい)した(だい)横田(よこた)臨ん(のぞん)だ400m自由形(じゆうがた)。アナウンサーの河西(かさい)(トータス松本(まつもと))による「実感(じっかん)放送(ほうそう)」で、(だい)横田(よこた)のレースの様子(ようす)伝え(つたえ)られた。(だい)横田(よこた)体調(たいちょう)万全(ばんぜん)ではない(なか)健闘(けんとう)見せる(みせる)も、レース終盤(しゅうばん)思う(おもう)ように(からだ)動か(うごか)せなくなる。結果(けっか)は3(ちゃく)銅メダル(どうめだる)だった。実感(じっかん)放送(ほうそう)(ちゅう)河西(かさい)(よこ)でレースを再現(さいげん)する(だい)横田(よこた)だったが、悔し(くやし)さや怒り(いかり)悲しみ(かなしみ)入り(はいり)混じっ(まじっ)表情(ひょうじょう)浮かべ(うかべ)立ちすくん(たちすくん)でしまった。その()には(なみだ)がにじむ。マイクの(まえ)泣い(ない)謝る(あやまる)(だい)横田(よこた)

試合(しあい)()られない(もの)もいる(なか)で、自分(じぶん)恵まれ(めぐまれ)ていました。それなのに、肝心(かんじん)(とき)に、大きな(おおきな)(いち)()()られず、すみませんでした」

 (なみだ)堪え(こたえ)きれない(だい)横田(よこた)姿(すがた)見つめる(みつめる)ことしかできない政治(せいじ)と、「もういい!もういい、喋る(しゃべる)な!」と止め(とめ)入る(はいる)高石(たかいし)描写(びょうしゃ)切ない(せつない)河西(かさい)のアナウンスにもあったが、(だい)横田(よこた)泳ぎ(およぎ)堂々たる(どうどうたる)ものだった。しかし金メダル(きんめだる)目指し(めざし)ていた選手(せんしゅ)にとって、銅メダル(どうめだる)終わる(おわる)という結果(けっか)はとてつもなく悔しい(くやしい)ものなのだろう。(はやし)はその悔し(くやし)さを、(なみだ)濡れ(ぬれ)表情(ひょうじょう)見事(みごと)表現(ひょうげん)していた。高石(たかいし)抱きとめ(だきとめ)られながら泣き(なき)続ける(つずける)(だい)横田(よこた)横顔(よこがお)忘れ(わすれ)られない。

 また、落語(らくご)になぞらえた演出(えんしゅつ)印象(いんしょう)(てき)だ。(いま)(さく)起き(おき)た「腹痛(はらいた)」というハプニングは、古典(こてん)落語(らくご)疝気(せんき)(むし)(せんきのむし)』になぞらえて描か(えがか)れた。腹痛(はらいた)苦しむ(くるしむ)(だい)横田(よこた)手元(てもと)前畑(まえはた)(うえ)白石(しらいし)(もえ)(うた))の(よこ)蠢く(うごめく)(むし)」の姿(すがた)。この「(むし)」の存在(そんざい)がハプニングの不穏(ふおん)さを醸し出す(かもしだす)一方(いっぽう)で、柄本(えもと)(とき)(せい)演じる(えんじる)(まん)(あさ)のコミカルな話し(はなし)(ぐち)が、物語(ものがたり)をテンポよく進める(すすめる)ことで笑い話(わらいばなし)へと変え(かえ)ていく。これまで幾度(いくど)となく不穏(ふおん)出来事(できごと)描か(えがか)れてきた。これからは戦争(せんそう)匂い(におい)強く(つよく)なることだろう。だが、この物語(ものがたり)落語(らくご)加わる(くわわる)ことで、不穏(ふおん)さと笑い(わらい)のバランスがとれ、物語(ものがたり)重く(おもく)なりすぎない。(いま)(さく)語り(かたり)()である(こころざし)(なま)(ビートたけし)、(こう)(ぞう)森山(もりやま)未來(みき))、()りん(神木(しぼく)隆之(たかゆき)(かい))による落語(らくご)今後(こんご)注目(ちゅうもく)だ。(片山(かたやま)(かおり)()

Loading